銀翹散

中国で最も売れている風邪薬
ノドが痛い風熱の初期の風邪に用いる(清熱解毒)

 

 1798年に『温病条弁』という革命的な本ができあがり、その中でも代表的な歴史的名方が、この銀翹散です。200年前のパンデミックのときに開発された薬で、現代でもノドの痛いウイルス性や細菌性の感冒の初期、あるいは鼻炎などの上気道のアレルギー症状や、皮膚炎にも効果を発揮します。日本では1639年 – 1854年に鎖国があったため、残念ながら保険適応がなく、当院では自主作成しています。

 

<ポイント>

① 1798年の医学書「温病条弁(ウンビョウジョウベン)」に収載されている比較的新しい時代(220年前)の薬方薬

 

② 1639年 – 1854年の鎖国中の新興感染症に対する薬のため、日本の古方には含まれず、保険適応がない。

 

③ 特にノドの痛い・口渇のある「風熱」の風邪によく効くため、常備携帯しておくと良い薬。

 

  若年から中年層のさまざまな感冒の初期に用いる。

  悪寒がある時は、1番葛根湯と併用すると良い。

 

 舌尖が紅くなり、脈は病邪が表にあるので浮脈のときが適応だが、どのような感冒の初期にも用いることができる。

 そのため中国では、もっともよく使われる漢方薬となっている。

 

 花粉症の目のかゆみにもよく用いられる。

 

⑥ 荊芥・淡豆鼓などの発散作用もあるため、麻疹・風疹・蕁麻疹などの初期治療にも用いる。

 

⑦ 清熱作用があり、薄荷の辛涼性によって口内炎の初期治療にも用いる。

 

⑧ 直接的に生薬が抗ウイルス作用を示すものもあるので、水を少量にしてノドの痛い部分に触れさせるのもよい。

 

⑨ 銀翹散の「散」は散財(生薬を粉にしたもの)が本来の形だが、日本で市販されている銀翹散は、エキス剤(生薬を煎じた上澄を粉にしたもの)のため、本来の薬ではない(当院ではホンモノの散財を作成)。また、芦根の代わりに羚羊角が用いられているものもある。

 

<内服方法>

食前又は食間に1日3〜4回、水又は白湯にて服用する。かぜによるのどの痛み・口(のど)の渇き・せき・頭痛の症状をおさえたい時に。

 

<構成生薬>

金銀花(キンギンカ)連翹(レンギョウ)牛蒡子(ゴボウシ)薄荷(ハッカ)淡豆鼓(タンズシ)桔梗(キキョウ)甘草(カンゾウ)荊芥(ケイガイ)竹葉(チクヨウ)芦根(ロコン)

*日本では芦根の代わりに羚羊角が用いられている。当サイトでは葦茎(イケイ)を用いていますが、効果は芦根と同等です。

 

 のどの痛み、口が渇いて水が飲みたくなるといった症状に合います。かぜの症状が出はじめた時に服用する点では葛根湯と同様ですが、さむけのあるかぜに葛根湯が効くのに対し、いつもに比べ顔がほてるなどの熱っぽい感冒、のどが痛いタイプに銀翹散は適しています。のどの痛みがでやすい時期は、乾燥する冬だけでなく、マスクをすることによる口呼吸や、エアコンを多用する夏も用いることができる薬です。

参照:口テーピング(サージカルテープ)

 

 「風熱」の邪(原因)が、口や鼻から入って体表や肺などを傷つけると漢方では考えます。暖かい空気が上に上るように、「風熱」の邪は身体の上部に留まり、鼻が乾燥したりのどに炎症を与えたり、頭痛といった症状が現れます。また熱によって水分も消耗させるので、口が渇いたりもします。「銀翹散」は、のどや体表の炎症を抑えながら「風熱」の邪を追い払い、かぜによるのどの痛みを感じる時に用います。

 

 

 

 

 

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[関連解説]

感冒の予防・初期治療について

呼吸について