竹葉(チクヨウ)
[基原]
イネ科(Gramineae)ハチク Phyllostachys nigra Munro var. henonis Stapf ex Rendle、マダケ P.bambusoides Siebold et Zuccarini、Bambusa textilis McClure または B.emeiensis L.C.Chia et H.L.Fung の葉
産地:四国
[異名別名]
淡竹葉(タンチクヨウ)、和淡竹葉(ワタンチクヨウ)、苦竹葉(クチクヨウ)、竹葉巻心(チクヨウケンシン)、竹葉心(チクヨウシン)
[選品]
濃い緑色で形が整っており、枝柄のないものが良品である。
貯蔵:乾燥したところに保管するのが望ましい。
[成分]
トリテルペノイド(グルチノール、グルチノン)、ペントーザン、リグニン
[薬理]
抽出液:抗老化、抗酸化、抗炎症、抗疲労
[効能主治]
性味:甘、淡寒
帰経:心、肺、胃
効能:津液を補い、清熱し、除煩する、利尿作用を持つ
主治:熱病による煩渇、小児のひきつけ、咳逆による吐血、鼻出血、尿量不足、血尿、口舌のびらん・できもの
[引用文献]
神農本草経:欬逆、上氣して溢(イッ)し、筋急、悪瘍を主る、小蟲(ショウチュウ)を殺す(竹葉の頁)
名医別録:胸中淡熱、欬逆(ガイギャク)上気を主る(淡竹葉の頁)
*ここでいう淡竹葉は、ハチク Phyllostachys nigra Munro var. henonis Stapt ex Rendle のことである
古方薬議:咳逆上氣を主り、煩熱を除き、淡を消し、渇を止め、嘔噦(オウエツ)吐血を治す
◯現代における運用のポイント◯
清熱作用
清熱作用により、上焦部の煩熱を除き、気の上衝を鎮める
鎮咳作用
呼吸器系の津液を補い、炎症を鎮めることにより、咳を止める
[配合処方]
竹葉石膏湯
【竹葉と淡竹葉について】
竹葉の類似生薬に「淡竹葉」がある。これは、イネ科のササクサ Lophatherum gracile Brongn の全草を指すもので、竹とは異なる。「淡竹葉」は、『中華人民共和国葯典』にも収載されている。
『本草綱目』によると「竹葉」には、「淡竹」「甘竹」「䈽竹(キンチク)」「苦竹」があり、「淡竹」はハチク P. nigra Munro var.henonis Stapf ex Rendle、「甘竹」は淡竹の属、「苦竹」は、マダケ P. bambusoides Siebold et Zuccarini である。すなわち、『名医別録』にある 「淡竹葉」は、ハチクのことを示している。また、『本草綱目』中には、「張仲景、猛詵は、このうち淡竹葉を上とした」という記載があり、古くは、薬用にハチクを重用していたことが伺える。なお、「䈽竹」は『古方薬議』によるとカシロタケがあてられている。
一方、ササクサ L. gracile Brongn を基原とする「淡竹葉」は、『本草綱目』にも別途記載があるが、『神農本草経』や『名医別録』にある「竹葉」「淡竹葉」とは別のものである。ササクサの「淡竹葉」は明代の『滇南(テンナン)本草』に初出し、その頃から用いられていたと考えられるが、外見や効能がよく似ていたことからハチクを基原とする「淡竹葉」と混同されることが多くなった。
両者は同様に用いいることもできるが、漢方処方中に「淡竹葉」との記載がある場合は、宋代以前の処方ならハチクが、明代以降の処方ならササクサが正品である。なお、現在の中国では、一般的に「淡竹葉」(ササクサの全草)が用いられている。
効能についてはほぼ同じで、清熱・除煩・利尿作用を持つが、清熱・生津作用は「竹葉」(ハチクなど竹の葉)が、利尿作用は「淡竹葉」(ササクサ)の方が強いとされている。
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)