薏苡仁(ヨクイニン)

[基原]

イネ科(Gramineae)ハトムギ Coix lacrymajobi Linné var. mayuen Stapf の種皮を除いた種子

 

産地:湖南省;タイ



[異名別名]

ハトムギ、八斗麦(ハトムギ)、玉珠(ギョクシュ)、起実(キジツ)、苡米(イベイ)、薏米(ヨクベイ)

 


[選品]

皮付は種皮を除いて用いる。 大粒、白色で充実し、重く歯間に粘着するものが良い

 

貯蔵:虫がつきやすいので低温で湿度の低い場所で保存する

 

 

[成分]

デンプン、タンパク質、脂肪油、多糖類、ステロー ル、コイクセノリドなど

 


[薬理]

抽出物:収縮血管拡張、子宮収縮、腸管収縮および収縮抑制(大量投与)、骨格筋収縮抑制、血糖・血清 Ca 量低下、抗腫瘍

コイクセノリド:抗腫瘍

 

 

[効能主治]

性味:甘淡、涼

帰経:脾、肺、腎

効能:利尿し、水腫を除き、瘀血を除き、イボをとり、肌を潤す、肺気を調え、肺痿(ハイイ)、肺癰(ハイヨウ)、咳嗽を治す、清熱する、湿を除き関節痛を治す。炒したものは下痢を止める

主治:神経痛、リウマチ、四肢筋肉のけいれん、水腫、脚気、肺痿、肺癰、小水混濁、帯下、水様性下痢

 

 

[引用文献]

神農本草経:筋急拘攣(キンキュウコウレン)し、屈伸すべからず、風湿痺、氣を下(クダ)すを主(ツカサド)る

古方薬品考:脾を扶(タス)け、湿痺を除去する(薏苡の項)

重校薬微:膿(ヨウノウ)を主治し、浮腫、身疼(シントウ)を兼治す

古方薬議:筋脈の拘攣、風湿痺を主り、氣を下し、腸胃を利し、水腫を消し、熱を清し、肺痿(ハイイ)、肺氣、膿血を吐するを主る

 

 

◯現代における運用のポイント◯

利水作用

体表の湿を除き、四肢の倦怠感を治し、また関節の水腫を除き、関節痛を治す。

美肌作用

瘀血を解毒し、血液を活性化して、肌を潤し、イボを取る。 特に水イボを取るには効果 がある。シミも薄くする。

抗腫瘍作用

肺および胃腸系のポリープ・腫瘍などに用い、それらの解消をはかる。 

 

[備考]

基原:

食用と薬用がある。 日本で薬用として使用されている薏苡仁はモチ型であり、ヨードデンプン反応が陽性となるウルチ型のものは除かれている。また、形態上、薏苡仁と紛らわしいジュズダマ (Coix lacryma-jobi L. var. susutama Honda : 川穀)はウルチ型である。東南アジアで食用とされているものは大粒のものが多い。種皮を除かないものはハトムギと言い、飲料原料として多量に使わ れる。

産地:

日本での生産もあるが、すべてハトムギ (殻つき)としての流通である。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)