当帰(トウキ)
[基原]
セリ科(Umbelliferae)トウキ Angelica acutiloba Kitagawa またはホッカイトウキ A. acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino の根を、通例、湯通ししたもの
産地:北海道、鳥取県、和歌山県、奈良県、青森県、群馬県、愛媛県、四川省、浙江省
[異名別名]
當歸(トウキ)、大和当帰(ヤマトトウキ)、大深当帰(オオブカトウキ)、北海当帰(ホッカイトウキ)、唐当帰(カラトウキ)、朝鮮当帰(チョウセントウキ)
[選品]
大きく、よく肥大し、木質化せず、柔らかで潤いがあり、表面が黄褐色を呈し、断面が黄白色〜アメ色で、柔軟性があり、芳香と甘味があり、やや辛いものを良品とする。大和産は甘味が多く芯まで湯通しされアメ色を呈する。
貯蔵:本品は油分を含み、空気中の水分を吸収しやすく、腐りやすく、かつ虫がつきやすいため、低温で、湿度の低い場所で保存するのが望ましい。
[成分]
精油(リグスチリド、ブチリデンフタリド)、ポリアセチレン類(ファルカリンジオール、ファルカリノール、ファルカリノロン)、コリン、クマリン(スコポレチン)など
[薬理]
抽出物:鎮痛、血管透過性抑制、抗炎症、子宮運動亢進その後抑制、急性浮腫抑制
精油:解熱
リグスチリド、ブチリデンフタリド:抗アセチルコリン作用
ファルカリンジオール:疼痛反応に拮抗
リグスチリド:抗喘息、鎮痙
[効能主治]
性味:甘辛、温
帰経:心、肝、脾
効能:補血する、血行促進し冷えを除く、止痛する、月経を調える、腸の津液を補い、活動を速やかにする。外用では、浴剤として血行を促進し冷えを除く。軟膏剤として皮膚組織の回復を早める。
主治:月経不順、月経停止、腹痛、癥瘕結聚(チョウカケツジュ)、不正子宮出血、貧血性の頭痛、めまい、麻痺、乾燥性便秘、下痢、しぶり腹、化膿性の各種できもの、打撲傷
[引用文献]
神農本草経:欬逆上氣(カイギャクジョウキ)、温瘧寒熱(ウンギャクカンネツ)の洗洗(センセン)として皮膚中に在るもの、婦人の漏下(ロウゲ)、絶子(ゼッシ)、諸悪瘡痬(ショアクソウヨウ)、金瘡を主る。煮て之を飲む
古方薬品考:温達せしめ、氣血を調和す
古方薬議:欬逆上氣、婦人漏下、心腹諸痛を主り、腸胃筋骨皮膚を潤し、中を温め、痛を止む
◯現代における運用のポイント◯
補血・回陽作用
血を補い、陽気をめぐらし、冷えを解消し、月経不順・月経痛・子宮内膜症・腹痛を治す
安胎作用
身体を温め、婦人科系の働きを活性化させ、不妊症を治し、妊婦においては安胎をはかる
通便作用
身体が冷え、腸部の血流不全によって起こる便秘に対し、造血をはかり、血流を改善して、腸の活動を促進し、便秘を解消する
【備考】
基原:
1.中国当帰(唐当帰)は A. sineensis (Oliv.) Diels.を基原とする。日本産当帰とは基原植物が異なり、成分含量も異なっているため、現在、日本の漢方処方では日局17に準拠した日本産当帰のみが使用されている。日本産当帰には、ホッカイトウキとトウキの2種がある。
2.現在、中国から輸入されているものは、日本の種苗を中国で栽培したものである。
3.当帰は、日本各地に自生し、江戸時代から野生種の採集や栽培がおこなわれてきた。現在は、野生品はほぼ採りつくされ、品種改良された栽培種のみが流通しているが、需要の20%程度を国内産で賄うことのできる数少ない生薬である。
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)