菟絲子(トシシ)

 

[処方用名]

菟絲子、菟絲餅

 

[基原]

ヒルガオ科 Convolvulaceae のマメダオシ Cuscuta chinensis Lam.、ネナシカズラ C. japonica Choisy などの成熟種子。



[性味]

辛・甘、微温



[帰経]

肝・腎・脾



[効能と応用]

①補腎陽・益精・固精・縮尿
腎虚のインポテンツ・勃起不全・遺精・早漏・精液尿などに、補骨脂・杜仲・枸
杞子・覆盆子・五味子・蓮子などと用いる。

腎陽虚の頻尿・尿失禁には、鹿茸・桑蛸・煅牡蛎などと使用する。

②養肝明目

肝腎不足の視力低下・めまい・目がかすむなどの症候に、熟地黄・杞子・桑椹・女貞子などと使用する。

③補脾止瀉
脾虚の泥状~水様便に、黄耆・人参・白朮・山薬・蓮子などと用いる。

④その他

腎虚の胎漏(妊娠中の性器出血)・胎動(妊娠中の下腹部痛)に、続断・桑寄生・阿などと使用する。



【臨床使用の要点】

菟絲子は甘辛・微温で、補腸すると同時に益精に働き、燥でなく膩でなく、肝・腎・脾を平補する良薬であり、固精・縮尿・明目・止瀉の効能を持っている。それゆえ、腎虚の陽萎・腰膝酸痛・遺精・白濁・小便不禁・尿有余瀝、肝腎不足の目暗不明、脾虚の便溏泄瀉などに適する。胎漏下血・胎動欲堕には補益腎腸の効能により効果をあらわす。
陽虚・陰虚のいずれにも使用できるが、補益腎陽に偏する。


参考

①煮熱し塊状にしたものを菟絲餅という。

②菟絲子・補骨脂は補腎助陽に働く。補骨脂は助陽の効能が強く、菟絲子は緩和に働いて助陽の効力は弱く、養肝明目の効能も備えている。

 

[使用上の注意]

平補ではあるが補陽に偏するので、陰虚火旺には用いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:「[新装版]中医臨床のための中薬学」(東洋学術出版社)