辛夷(シンイ)

 

[基原]

モクレン科(Magnoliaceae)タムシバ Magnolia salicifolia Maximowicz, コブシ M. kobus De Candolle, M. biondii Pampanini, M. sprengeri Pampanini, またはハクモクレン M. heptapeta Dandy(M. denudata Desrousseaux)のつぼみ

産地:山形県、青森県、新潟県、河南省、浙江省、山東省、湖北



[異名別名]

侯桃(コウトウ)、辛(シンチ)、望春花(ボウシュンカ)、毛辛(モウシンイ)、辛夷桃(シンイトウ)



[選品]

芳香の強いものを良品とする。開花前の花蕾で内部の充実したなるべく大きいもの、乾燥したものが良い。花柄は取り除くこと。日本産は表面の皮が黒褐色で、やや小粒であるが精油分量は多い。中国産は表皮がなく繊毛に覆われており、粒は大きいが、香りは日本産に劣る。

貯蔵:精油の揮散を防ぐため、気密保存するのが望ましい。



[成分]

精油(シトラール、α- ピネン、1,8- シネオール)、ネオリグナン、リグナン、アルカロイド(d-コクラウリン)など



[薬理]

抽出液:子宮興奮、降圧、強い抗真菌、消炎

抽出物:筋弛緩、抗アセチルコリン

揮発油:鼻粘膜血管収縮



[効能主治]

性味:辛、温
帰経:肺、胃

効能:風邪を除き、鼻閉を治す


主治:頭痛、鼻淵、鼻づまり、歯痛



[引用文献]

神農本草経:五臓、身体の寒熱、風頭脳痛、面䵟(メンカン)を主る

名医別録:中を温め、肌を解し、九竅(キュウキョウ)を利し、鼻塞涕出(ビソクテイシュツ)を通じ、面腫の歯に引いて痛むものを治す

 

◯現代における運用のポイント◯

鼻閉発散作用
かぜなどによる鼻水・くしゃみ・鼻づまりおよび蓄膿症に用い、鼻閉を解消する

治頭痛作用
発汗作用により風寒を除き、主に感冒による頭痛・頭重に用いる

 

【備考】

 基原:
日本に輸入されている中国辛夷はほとんどが望春花(M. biondii Pamp.)のつぼみである。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)