山薬(サンヤク)
[基原]
ヤマノイモ科(Dioscoreaceae)ヤマノイモ Dioscorea japonica Thunberg またはナガイモ D. batatas Decaisne の周皮を除いた根茎(担根体)
産地:青森県、河南省、江蘇省
[異名別名]
薯蕷(ショヨ)、山芋(サンウ)、署蕷(ショヨ)、諸署(ショショ)、署豫(ショヨ)
[選品]
質が堅く充実しており、噛んで粘りがあり、わずかに甘味があり酸味のないもの、色が白く虫のついていないものを良品とする。粘り気の点で勝る野生品(自然生 / ジネンジョ)を珍重するが、流通上ではほとんど見かけられない。古くなり黄色っぽく変色し、質が軽くてもろく断面に空心があるものは、次品である。
貯蔵:虫がつきやすいので、低音で湿度の低い場所に保管する。
[成分]
デンプン、多糖類、糖タンパク質、アミノ酸など
[薬理]
多糖類:血糖降下
[効能主治]
性味:甘、平
帰経:肺、脾、腎
効能:胃腸機能を高め、肺を補う、腎を固める、強壮する
主治:脾腸虚による下痢、長期の下痢、身体虚弱による咳嗽、糖尿病、遺精、帯下、頻尿
[引用文献]
神農本草経:傷中を主り、虚羸(キョルイ)を補い、寒熱邪氣を除き、中を補い、氣力を益し、肌肉(キニク)を長ず(署蕷の頁)
古方薬品考:源を調え、虚損を補復す(薯蕷の頁)
古方薬議:寒熱邪氣を除き、腰痛洩痢(セツリ)を止め、痰涎(タンエン)を化し、虚労羸痩(キョロウルイソウ)を主る(薯蕷の頁)
◯現代における運用のポイント◯
補脾胃作用
胃腸虚弱なものに用い、食物消化を助け、下痢を止め、便通を調える。併せて、小児の脾虚証による寝汗を治す。
補肺腎作用
肺陽虚・腎陽虚を補い、呼吸器系疾患および夜尿症を含む泌尿器系疾患の改善に用いる。
糖尿病治療作用
口渇を鎮め、糖尿病の体質改善に用いられる。
【備考】
基原:
1.市場のほとんどはナガイモであり、ヤマノイモは日本産品の一部にあるが、極めて少ない。
2.D. alata Linné を基原とする広西産山薬も市場に流通する可能性があるので、注意が必要である。
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)