気滞・肝気鬱結

 気の流れを調整する肝臓は、ストレスやアルコール、ホルモン剤、動物性脂肪、生理などによる影響を受けやすく、肝臓が失調すると、気の流れが悪くなる「肝気鬱結(カンキウッケツ)」という状態になります。地形の乱れが修正されないので、川は曲がりくねったデコボコの斜面を流れ、流れが悪くなる「気滞」や、「気逆」が顕著になることもあります。

 

 肝の機能が落ちている状態は「肝胃不和(カンイフワ)」と呼ばれ、一般的に疎肝(ソカン)の治療時には補気(ホキ)もするという治療原則があります。これは流れの悪い川の整地だけをしてもまたすぐに乱れてしまうのと同様で、整地と共に水の量も増やさなければならないという治療法則です。逆に整地が終っていないのに水だけを増やすと氾濫して、めまいや、ほてりなどが出てしまいます。このことは肝気鬱結や、陰虚火旺(インキョカオウ)の状態に補中益気湯(ホチュウエッキトウ)のような強い補気薬を用いたときなどによく見られる副作用です。


 ☆ 気滞・気逆: ストレスが溜まっているときや、生理・アルコールと関連していることが多い。


気滞

気の流れが滞っている状態

ノドや胸の閉塞感、呼吸困難感、過換気症候群、動悸


気逆

気が逆流している状態 ゲップ、胸焼け、焦り


肝気鬱結

気の流れが乱れている状態。他人や自分の悪いところに目がいく。

頭痛、めまい、火照り、イライラ、憂うつ、胸脇部の張り、ため息などの症状を呈する。 

肝は血を司るので、生理時に乳房が張って痛む、生理痛、生理不順とも関連


→理気薬

・半夏厚朴湯:ノドのつまりや息苦しさ、不安などを改善する。

・六君子湯:補気剤の四君子湯に、半夏・陳皮を加え気滞を改善。食欲を増進させる。


→疎肝

・四逆散:イライラや胸脇苦満などの痛みを治す。

・加味逍遥散:イライラに加えて火照りなどを改善。女性の月経関連の不調改善に用いる。

・柴朴湯 :疎肝・清肝・健脾の小柴胡湯に、理気の半夏厚朴湯を加えたもの

・柴胡加竜骨牡蠣湯:イライラや焦燥を抑え心神不安を鎮める。即効性があり入眠時などに。