蒲黄(ホオウ)
[処方用名]
蒲黄・生蒲黄・炒蒲黄・蒲黄炭
[基原]
ガマ科 Typhaceae の ヒメガマ Typha angustifolia L.、その他同属植物の成熟した花粉。
[性味]
甘、平
[帰経]
肝・心包
[効能と応用]
①止血
鼻出血・歯齦出血・吐血・喀血・血尿・血便・性器出血など各種の出血に、単味であるいは血余炭・棕櫚炭などと用いる。
外傷の出血には、烏賊骨と粉末にして外用する。
②活血散瘀
血瘀による月経痛・無月経・腹痛あるいは産後瘀阻などに、五霊脂と用いる。
重舌・口内炎・舌出血に、単味を外用する。
③その他
散瘀止血と利水通淋の効能をもつので、血淋(炎症性尿路出血)の排尿通・血尿に、冬葵子・生地黄などと用いる。
【臨床使用の要点】
蒲黄は甘緩で峻でなく平で寒熱に偏さず、肝・心包二経の血分に入り、止血散瘀し兼ねて利小便に働く。止血の効能により吐血・衄血・崩漏下血・外傷出血に良効を示し、活血散瘀の佳品でもあり、血瘀の経閉痛経・産後瘀阻・瘀血阻滞の心腹刺痛などに効果がある。また、止血化瘀と利水通淋の効能をもつので、血淋渋痛に有効である。
[参考]
生用すると滑利行血に、炒用すると収渋止血に働くとされる。
《神農本草経》には 「利小便、止血、散瘀血」と書かれ、止血と散瘀に働くとされてはいるが、生用行血・炒用止血とは指摘されていない。宋代の《日華子本草》に「破血消腫生用、補血止血炒用」とあり、明代の《本草綱目》にも同様に記載されているところから、今日までこの説が踏襲されている。ただし、臨床上は生蒲黄にも一定の止血効果があり、炒炭に拘泥する必要はない。
[使用上の注意]
①包煎する。
②子宮収縮をひきおこすので、妊婦には禁忌。
参考文献:「[新装版]中医臨床のための中薬学」(東洋学術出版社)