五霊脂(ゴレイシ)
[処方用名]
五霊脂・醋霊脂・霊脂炭
[基原]
ムササビ科 Petauristidae の動物 Trogopterus xanthipes Milne. Edwards.、Pteromys volans L. などの糞便。
[性味]
甘、温
[帰経]
肝
[効能と応用]
①通利血脈・散瘀止痛
気滞血瘀の胸脇痛・上腹部痛に、延胡索・香附子・没薬などと用いる。
血瘀による月経痛・無月経や産後瘀阻の腹痛に、蒲黄などと用いる。
②祛瘀止血
血瘀による不正性器出血・月経過多で紫黒色の凝血塊や下腹痛などをともなうときに、丹参・生地黄・阿膠などと使用する。
【臨床使用の要点】
五霊脂は甘緩不峻で温通し、主に肝経血分に入り、通利血脈・散瘀止痛に働き、一切の血瘀気滞作痛の要薬である。心腹脇肋血滞諸痛・婦女経閉痛経・産後瘀阻に適している。妙用すると、「行中有止」 で祛瘀するとともに止血に働くので、瘀血による婦女崩漏・月経過多に有効である。
[参考]
生用すると行血に、炒炭すると止血に働く。 酷炒すると行血の効能が強くなる。
[使用上の注意]
①妊婦・血虚無瘀には禁忌。
②気濁で煎服すると臭いが悪いので、胃気虚弱のものは服用しないほうがよい。
③「人参は最も五霊脂を怕(オソ)る」「人参を悪み、人を損ず」とあり、人参とは配合しない。
参考文献:「[新装版]中医臨床のための中薬学」(東洋学術出版社)