白芷(ビャクシ)
[基原]
セリ科(Umbelliferae)ヨロイグサ Angelica dahurica Bentham et Hooker Filius ex Franchet et Savatier の根
産地:韓国、北朝鮮
[異名別名]
芷(シ)、香白芷(コウビャクシ)
[選品]
香りが強く気味に富み、類白色を呈する新しいものを良品とする。肥大しているものが良いが、むやみに肥大しているもの、虫食いのあるもの、「ス(細かい空洞)」の入ったものは良くない。また分枝がなく、皮が細かく、外表が土黄色、硬くなめらかで光沢のあるものが良い。
貯蔵:特に虫がつきやすいので、虫害を防ぎ香気を保つため、低温が湿度の低い場所で気密保存するのが望ましい。
[成分]
フロクマリン類(ビャク-アンゲリシン、ビャク-アンゲリコール、インペラトリン)など
[薬理]
抽出液:抗アレルギー
抽出物から精製した樹脂様物質:(少量で)血管運動中枢・呼吸中枢・心臓抑制中枢・迷走神経および脊髄を興奮、血圧上昇、脈拍緩徐、呼吸運動および反射機能興奮、流涎、嘔吐。(大量で)強直性ないし間代性けいれん・麻痺、赤痢菌・チフス菌・グラム陽性菌・ヒト型結核菌に対して生育抑制
フロクマリン類:脂肪分解促進、脂肪生成阻害、血管拡張、抗けいれん
アンゲリコトキシン:中枢神経興奮
[効能主治]
性味:辛、温
帰経:肺、脾、胃
効能:感冒を治し、風邪・湿邪を除く、できものや関節の腫痛を治す
主治:頭痛、眉稜骨(ビリョウコツ)痛、歯痛、鼻炎、寒湿による腹痛、痔瘻、出血を伴う帯下、化膿性の各種できもの、皮膚掻痒症、疥癬(カイセン)
[引用文献]
神農本草経:女人の漏下赤白(ロウゲセキハク)、血閉(ケッペイ)、陰腫(インシュ)、寒熱風頭(カンネツフウトウ)の目を浸し涙出するを主り、肌膚(キフ)を長じ、潤沢にする
本草綱目:鼻淵(ビエン)、鼻衄(ビジク)、歯痛、眉稜骨痛、大腸風秘(ダイチョウフウヒ)、小便失血、婦人の血風眩運(ケップウゲンウン)、翻胃(ハンイ)吐食を治す
【備考】
基原:
中国産白芷には、抗白芷〔A. dahurica var. formosana(Boiss)Shan et Yuan〕を基原植物とするものがあり、これは局方規格に適合しない。
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)