白朮(ビャクジュツ)
[基原]
キク科(Compositae)
①オケラ Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamuraの根茎(和ビャクジュツ)または②オオバナオケラ A.macrocephala Koidzumi(A.macrocephala Koidzumi(A. ovata DeCandolle)の根茎(唐ビャクジュツ)
産地:①吉林省、黒竜江省、遼寧省、北朝鮮、②湖南省、浙江省
[異名別名]
和白朮(ワビャクジュツ)・唐白朮(カラビャクジュツ)・朮(ジュツ)
[選品]
①ワビャクジュツ・・・断面は黄白色、質はやや疎であるが、油点が多く香気に富むものが良品とされる。
②カラビャクジュツ・・・大きくて表面は灰黄〜灰褐色、断面は黄白色、質は硬固で、空洞のないものが良品とされる。
両者とも葉茎等の混入のないものが良い。
貯蔵:精油の揮散を防止するため、気密保存が望ましい。
[成分]
精油〔ユーデスマ-4(14)、7(11)-ジエン-8-オン、アトラクチロン、アトラクチレノリド Ⅰ〜Ⅲ〕など
[薬理]
抽出物:抗ストレス潰瘍、酢酸腹膜炎による血管透過性の亢進抑制(ユーデスマジエン、アトラクチレノリド Ⅰ〜Ⅲ が関与)、抗炎症、胆汁分泌促進、抗潰瘍
アトラクチロン:肝障害抑制
[効能主治]
性味:苦甘、温
帰経:脾、胃
効能:脾胃を補い、湿を除く、健胃・利尿・鎮静作用を有す
主治:消化器系の弱い虚弱体質、食欲不振、疲労倦怠感、腹部膨満感、下痢、胃内停水、水腫、黄疸、関節炎、関節腫瘍、神経痛、脚気、小便困難、めまい、寝汗、妊婦のむくみ
[引用文献]
神農本草経:風寒湿痺、死肌、痙、疸と主り、汗を止め、熱を除き、食を消す
古方薬品考:湿水を除いて、尿道を調利せしむ
重校薬徴:利尿を主る。故に小便不利、自利、浮腫、支飲冒眩、失精下痢を治し、沈重疼痛、骨折疼痛、嘔渇、しばしば唾するを兼治す
古方薬議:風寒湿痺を主り、胃を開き、痰涎を去り、下泄を止め、小便を利し、心下急満を除き、腰腹冷痛を治す
◯現代における運用のポイント◯
健胃作用
胃腸虚弱のものに用い、食欲不振・腹部膨満・下痢を治す。
利尿作用
体表の浮腫・倦怠などの原因となる湿を除き、それらの症状を解消する。また、腹中の湿を除き、腹部膨満・軟便を解消する。
止汗作用
表虚証の自汗に伴い、脾胃の機能を高め、利尿をはかり、自汗を解消する。
[配合処方]
茵蔯五苓散、越婢加朮湯、越婢加朮附湯、加味帰脾湯、加味四物湯、加味逍遙散、加味逍遙散加川芎地黄(加味逍遙散合四物湯)、加味平胃散、帰脾湯、芎帰調血飲、芎帰調血飲第一加減、桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯、桂枝芍薬知母湯、桂枝二越婢一湯加朮附、桂枝人参湯、啓脾湯、香砂平胃散、香砂六君子湯、五積散、五苓散、柴芍六君子湯、柴苓湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯、四君子湯、十全大補湯、消風散、逍遙散(八味逍遙散)、四苓湯、真武湯、清湿化痰湯、清上蠲痛湯(駆風触痛湯)、清暑益気湯、疎経活血湯、大防風湯、定悸飲、当帰散、当帰芍薬散、当帰芍薬散加黄耆釣藤、当帰芍薬散加人参、当帰芍薬散加附子、女神散(安栄湯)、人参湯(理中丸)、人参養栄湯、不換金正気散、茯苓飲、茯苓飲加半夏、茯苓飲合半夏厚朴湯、茯苓沢瀉湯、附子理中湯、平胃散、防已黄耆湯、補中益気湯、薏苡仁湯、抑肝散、抑肝散加芍薬黄連、抑肝散加陳皮半夏、六君子湯、苓姜朮甘湯、苓桂朮甘湯、連珠飲
【備考】
基原:
1.白朮としては、現在、種の異なるワビャクジュツとカラビャクジュツの両方が認められているが、成分的には類似している。日本産のものは多年草であるが、カラビャクジュツは二年草である。
2.現在では、純度試験により蒼朮とは区別されるようになっている
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)