丹参(タンジン)

 

[処方用名]

丹参、紫丹参、血丹参

 

[基原]

シソ科 Labiatae のタンジン Salvia miltioritiza Bunge の根。



[性味]

苦、微寒



[帰経]

心、肝



[効能と応用]

①活血祛瘀
血熱瘀滞による月経不順・月経痛・無月経・腹腔内腫瘤あるいは産後瘀阻の腹痛・悪露排出不全に、単味の粉末を酒で服用するか、当帰・赤芍・益母草・沢蘭などと用いる。

瘀血痺阻心脈による狭心痛に、川芎・紅花などと用いる。

肝鬱気滞血瘀の脇痛に、鬱金・香附子・当帰などと使用する。瘀血阻滞による胸腹刺痛に、檀香・砂仁などと使用する。

近年は以下の状況にも使用されている。子宮外妊娠破裂による腹腔内血腫に,乳香・没薬・当帰・桃仁・紅花などと用いる。


②涼血消腫

癰腫瘡毒(皮膚化膿症など)に、金銀花、連翹、蒲公英、乳香、没薬などと用いる。

風湿熱痺による関節の腫脹、疼痛、発赤、熱感に、単味であるいは蒼朮、黄柏、牛膝、赤芍、牡丹皮などと使用する。

③清心除煩

熱入営分の焦躁、不眠、夜間の高熱などに、角、生地黄、玄参などと用いる。

心神不安の不眠に、単味のチンキ剤を服用する。



【臨床使用の要点】

丹参は苦・微寒で、苦で泄降し寒で清熱し、心肝二経の血分に入り、活血瘀・涼血消腫・清心除煩に働く。主として涼血活血通経の効能をもつので、血熱瘀滞による月経不調・経閉痛経・癥痕積聚、產後瘀阻の悪露不尽・少腹作痛にもっとも適し、療血阻滞による心腹刺痛や肝鬱脇痛にも有効である。また、涼血消腫・通経止痛の効能により癮腫瘡毒・熱車疼痛に、清心除煩・安神定志の効能により熱入営血の心煩不寝に、それぞれ効果がある。



[参考]

①先人は「一味の丹参散、効は四物湯に同じ」と指摘し、丹参に補血の効能があるとしているが、実際には通経の薬物であり、「疹血祛(ノゾ)けばすなわち新血生ず」の意味であり、四物湯のような補血の効能はもっていない。


②丹参・川芎は活血調経に働き、瘀血諸痛・腫瘡毒、関節痺痛に用いられる。川芎は辛温で活血行気・散寒止痛に働き、寒凝の気滞血瘀に適する。丹参は苦寒で涼血活血・通経止痛に働き、 血熱の滞に適する。 また、 川芎は風止痛により頭痛に有効であり、丹参は清心安神により煩熱神昏に有効である。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:「[新装版]中医臨床のための中薬学」(東洋学術出版社)