川芎(センキュウ)
[基原]
セリ科(Umbelliferae)センキュウ Cnidium officinale Makino の根茎を、通例亥、湯通ししたもの
産地:北海道、岩手県、福島県
[異名別名]
芎藭(キュウキュウ)、胡藭(コキュウ)
[選品]
一般に肥大し、硬く、重質で充実しており、外面は灰色〜灰褐色、内面が帯緑褐色〜アメ色で空心がなく、虫がついておらず、芳香が強く、辛味の強いものを良品とする。北海道では、通常10月ごろまでに掘り出すが、遅れると乾燥中に凍結して空心ができ劣品となる。
貯蔵:生干(キボ)しの川芎は非常に虫が付きやすい(現在は流通していない)。市場品は湯通しかあるいは蒸してあり、デンプンが糊化して角質となり虫害を受けにくいが、湯通しが悪く糊化不十分であるものもあり、保管は、乾燥の良い場所で行うと良い。
[成分]
精油(フタリド化合物:クニジリド、ネオクリニジド、リグスチリド、ブチリデンタリドなど)
[薬理]
抽出液:抗血栓
抽出物:ヘキソバルビタール睡眠延長、メタンフェタミン運動量亢進の拮抗、体温降下、鎮痛、中枢抑制、血管拡張
リグスチリド、ブチリデンタリド:鎮痙
クニジリド、ブチリデンタリド、ネオクリニジド:抗カビ
[効能主治]
性味:辛、温
帰経:肝、胆
効能:うっ滞した気をめぐらし、風邪(フウジャ)・湿邪を除く。活血し、止痛する
主治:風寒による頭痛・めまい、脇や腹の疼痛、寒邪による筋の麻痺、無月経、難産、後産の下りきらないもの、化膿性の腫れ物
[引用文献]
神農本草経:中風脳に入りて頭痛し、寒痺によりて筋攣緩急(キンレンカンキュウ)し、金瘡(キンソウ)、婦人の血閉して子無きを主る(芎藭の項)
古方薬品考:上達し、瘀(オ)を破り、血を順(メグ)らす(芎藭の項)
古方薬議:頭痛、金瘡、血閉、心腹堅痛、半身不遂(ハンシンフツイ)、鼻洪(ビコウ)、吐血及び溺血(デキケツ)を主り、膿を排し、氣を行(メグ)らし、鬱を開く(芎藭の項)
◯現代における運用のポイント◯
活血・行気(ギョウキ)作用
非活動的となった血流を改善し、気をめぐらし、月経不順・月経痛・腹痛・難産・冷え性などを治す
鎮痛作用
血行を促進し、沈滞した気を発散し、風邪(フウジャ)・瘀血による頭痛を治す
[配合処方]
胃風湯、烏薬順気散、温経湯、温清飲、応鐘散(芎黄散)、葛根湯加川芎辛夷、加味四物湯、加味逍遙散加川芎地黄(加味逍遙散合四物湯)、芎帰膠艾湯、芎帰調血飲、芎帰調血飲第一加減、響声破笛丸、荊芥連翹湯、荊防敗毒散、五積散、五物解毒散、柴葛湯加川芎辛夷、柴胡清肝湯(散)、柴胡疎肝湯、酸棗仁湯、紫根牡蛎湯、滋腎通耳湯、滋腎明目湯、七物降下湯、四物湯、十全大補湯、十味敗毒湯、小続命湯、清上蠲痛湯(駆風触痛湯)、清上防風湯、清熱補血湯、折衝飲、洗肝明目湯、川芎茶調散、千金内托散、続命湯、疎経活血湯、大防風湯、治頭瘡一方、治頭瘡一方大黄、治打撲一方、猪苓湯合四物湯、当帰飲子、当帰散、当帰芍薬散、当帰芍薬散加黄耆釣藤、当帰芍薬散加人参、当帰芍薬散加附子、女神散(安栄湯)、防風通聖散、補陽還五湯、奔豚湯(金匱要略)、抑肝散、抑肝散加芍薬黄連、抑肝散加陳皮半夏、連珠飲
【備考】
基原:
中国における川芎の基原植物は Ligusticm chuanxiong Hort. である。日本産とは基原が異なるために、成分含量も異なる。日本の漢方処方では日局17に準拠した日本産の川芎を使用している。なお現在は、日本の川芎の種苗を中国で栽培し輸入することもある。
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)