竜骨(リュウコツ)
[基原]
大型ほ乳動物の化石化した骨で、主として炭酸カルシウムからなる
産地:陜西省、甘粛省、内蒙古
[異名別名]
龍骨(リュウコツ)、白竜骨(ハクリュウコツ)、花竜骨(カリュウコツ)、五花竜骨(ゴカリュウコツ)、土竜骨(ドリュウコツ)
[選品]
白色で質が柔らかく、破砕しやすいもの、なめると舌に吸着するものが良品である。黄色や暗黒色のもの、硬く砕けにくいものは良くない。最近は動物の骨を酸で処理した速成のものが多く出回っており、本物の化石は少ない。
[成分]
炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ケイ酸、鉄分、カリウム、リン、ヨウ素など
[薬理]
抽出物:体温降下、抗けいれん、中枢神経抑制
[効能主治]
性味:甘渋、平
帰経:心、肝、腎、大腸
効能:精神安定をはかり、けいれん発作を鎮める。気虚を補い汗を止め、遺精を治す。陽虚による出血を止める。腎・腸の陽気を補い、下痢を治す。外用して、口のふさがらないできものを治す
主治:精神不安によるけいれん発作、動悸、不安、健忘、不眠多夢、自汗、寝汗、遺精、小水混濁、吐血、鼻出血、血便、不正子宮出血、帯下、下痢脱肛、長期間傷口がふさがらない潰瘍。
[引用文献]
神農本草経:心腹鬼㾏(シンプクキシュ)、精物老魅(セイブツロウミ)、欬逆(ガイギャク)、洩痢膿血(セツリノウケツ)、女子漏下(ロウゲ)、癥瘕堅結(チョウカケンケツ)、小児の熱氣驚癇(ネッキキョウカン)、歯を主る。小児大人の驚癇、癲疾狂走(テンシツキョウソウ)、心下の結氣、喘して息することあたわず、諸(モロモロ)の痙(ケイ)、精物を殺すを主る
古方薬品考:血を理(オサ)め、神(シン)の虚脱を鎮む
重校薬徴:臍下(サイカ)の動を主治し、驚狂(キョウキョウ)を兼治す
古方薬議:小兒熱氣(ショウニネッキ)、驚癇、心腹煩満を主り、夢寐洩精(ムビセッセイ)、小便洩精を療す
◯現代における運用のポイント◯
精神安定作用
精神疲労による不眠・不安・動悸・のぼせ・寝汗・多夢などに用い、気を補い精神安定をはかり、不安を解消する
強壮作用
気虚証のインポテンツおよび夢精に用い、益気・益精し、強壮をはかる
[配合処方]
桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯
【備考】
基原:
竜骨の基原には諸説あるが、正倉院御物中の竜骨および竜歯はインド産の化石シカ cervus (Axis) punjabiensis Brown や旧ゾウ Palaeoloxodon namadicus (Falc. & Caut) などを基原としている。
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)