黄精(オウセイ)
[処方用名]
黄精、製黄精
[基原]
ユリ科 Liliaceae のカギクルマバナルコユリ Polygonatum sibiricum Red.、P. cyrtonema Hua その他同属植物の根茎。市場には黄酒で蒸熱したものもある。
[性味]
甘、平
[帰経]
脾・肝・腎
[効能と応用]
①補脾気・益脾陰
脾気陰両虚による食欲不振・食べると腹が張る・口乾・便が硬い・舌質が紅・少苔などの症候に、人参・白朮・玉竹・山薬などと使用する。
②潤肺止咳
肺陰虚の乾咳・無痰などの症候に、単味を煎熬した膏を服用するか、沙参・麦門冬・貝母などと用いる。
③補腎益精
腎精不足による腰や膝がだるく無力・頭のふらつきなどの症候に、枸杞子・熟地黄などと用いる。
腎陰虚の消渇にも、生地黄・玄参・天花粉・山薬などと使用する。
【臨床使用の要点】
黃精は甘平で厚膩であり、補脾気・益牌陰に働く補脾薬で、潤肺燥・益腎精の効能ももっている。脾気陰両虚の倦意食少・腹満便乾・口乾煩熱・舌紅少苔、肺虚の燥咳、腎虚精虧の腰膝痠軟、頭暈耳鳴および消渇などに適する。
[参考]
①黄精・山薬は補気養陰に働き、益陰潤燥の効力は黄精が勝り、山薬は平補に渋性を兼ねるので、脾虚便溏には山薬が、陰虚便燥には黄精が適する。
②黄精は甘味で厚膩であり熟地黄に似るが、熟地黄は補腎陰・益精血に働き、黄精は補脾潤肺に養陰益精を兼ねている。
[使用上の注意]
①性質が和平で作用が緩慢であるから、久服滋補の薬物と考えるべきである。
②滋膩で助湿しやすいので、脚虚有湿・咳嗽多痰には用いない。
参考文献:「[新装版]中医臨床のための中薬学」(東洋学術出版社)