気虚
「気」は元気・やる気の「気」(動かす力)
気には「先天の気」と「後天の気」、つまり生まれ持った気と、生まれた後に作られる気があると考えられています。前者は腎で作られ、後者は小腸や肺で作られます。両親に元気がある人は元気な人が多く、胃腸が強い人は食欲も旺盛になります。
この遺伝性を近年の西洋医学では、エネルギー産生を担うミトコンドリアとの関係で考えられています。東洋医学では父親からの影響もあると考えられていますが、ミトコンドリアの遺伝子は母系遺伝であり、母親の影響だけを受けるとされています。また、後天の気は漢方薬の補気剤を用いると高まり、先天の気は補腎剤(自然塩など)によって高まります。杞菊地黄丸(コギクジオウガン)という漢方薬には、本来塩が含まれていましたが、塩が悪いという噂が広まってしまったために現在は含まれていません。
☆「気虚」の症状 : 疲労時、長く病気をしている時など
① 推動↓
歩く・走る・話すなどの動作や、血や水を動かす作用が低下
便秘、むくみ、だるい、やる気が出ない、息切れがする、声が小さい、
動きが緩慢、なまあくび、食欲がない、汗が出ない、尿がでない、様々な臓腑の失調
食後眠くなる、めまい、関節痛、腹痛など(不通則痛:経絡の流れが止まると痛む)
頭痛(気虚による頭痛はワッカを被ったような鈍い頭痛が多い)
② 温煦・固摂↓
動かすだけでなく熱や水を適切に留めておく能力が低下
不眠、寝汗、多汗、汗が止まらない、尿が薄くて多い、下痢、冷え症(陽虚になる)
各種出血、内臓下垂(胃・子宮)、子宮脱、脱肛
③ 営養↓
栄養すなわち血を作り出す機能の低下
やせる・疲れやすい、持続力がない
(気虚が長い状態続くと血虚になり、血虚の症状が出ます)
④ 防衛↓
外から来る外邪(がいじゃ)の侵入を防ぐ機能の低下
風邪をひきやすい(外邪の侵入)、すぐ寒気がする(寒邪の侵入)
熱がでやすい(熱邪の侵入)、帯状疱疹
これを見ると中には便秘と下痢のように、相反する症状もありますが、気虚の状態では、それらを反復するということもよくあります。例えば、下痢と便秘を繰り返すというのは「気虚」の患者さんに特徴的な症状です。これは川の水の量が少ないと、雨や地形の変化によって流れにムラが出来るのと同じです。寝汗も同様で、汗が出るべき時に出ず、出るべきでない時に出るという症状になります。また、同症状でも原因が異なる時もあります。寝汗にも陰虚や気虚・水毒・痰湿など様々な原因があります。めまいや帯状疱疹は「気虚」によるものや「痰湿」「肝気鬱結」によるものなどいくつかの原因があります。
<補気剤>
・玉屏風散:気道系と消化器系の免疫力を高め、感冒予防として用いる。
・75 四君子湯:補気剤の基本処方:人参3-4;白朮3-4(蒼朮も可);茯苓4;甘草1-2;生姜0.5-1;大棗1-2
・41 補中益気湯:「医王湯」と呼ばれるほど補気の作用が強い。ただし、副作用も強く陰虚火旺などで、ほてりのある人には不向き。
・136 清暑益気湯:補中益気湯に類似し、麦門冬・五味子によって口渇が緩和されるため、夏の飲み過ぎを防ぎ、黄柏による清熱で夏バテを予防する。(夏バテには白虎加人参湯のほうが清熱作用が強い)
・128啓脾湯:脾胃の虚弱を改善し、軟便や吐き気を改善する。肉の摂取で軟便になる人向け。
その他:43、65、108、137など