茯苓(ブクリョウ)
[基原]
サルノコシカケ科(Polyporaceae)のマツホド Wolfiporia cocos Ryvarden et Gilbertson(Poria cocos Wolf)の菌核で、通例、外層をほとんど除いたもの。
産地:雲南省、湖北省、湖南省、四川省、貴州省、安徽省、広西、北朝鮮
[異名別名]
伏苓(ブクリョウ)・赤茯苓(セキブクリョウ)・茯神(ブクシン)・伏神(フクシン)・茯菟(フクト)・茯霊(ブクレイ)
[選品]
重く堅く充実しており、断面はキメが細かく、淡紅色あるいは純白で、噛むと歯に強力に粘着するものを良品とし、たたくと空虚な音がし、軽くふんわりとし、断面が粗かったり、裂け目のあるものは次品である。また、表皮を完全に除去したものが良い。栽培品は軽質で粘り気がないので次品である。
貯蔵:低音で乾燥した場所に保管すると良い。ただし、風通しの良い場所などであまり乾燥しすぎると、粘性を失い、ひび割れが生じるので良くない。防湿、防寒、防熱に心がけること。なお、カビの生えたものは使えない。
[成分]
トリテルペン(エブリコ酸、パヒマ酸)、ステロール、多糖類(β-パヒマン)など
[薬理]
抽出物:極めて弱い利尿、胃潰瘍予防
多糖類:抗腫瘍活性
[効能主治]
性味:甘淡、平
帰経:心、脾、肺
効能:湿を除き水分代謝を促す、脾胃を補い胃腸の働きを促進し精神を安定させる
主治:小便不利、水腫による脹り・むくみ、胃内停水を伴う咳嗽、嘔吐、水溶性下痢、遺精、尿混濁、精神不安によるけいれん発作、健忘症
[引用文献]
神農本草経:胸脇逆氣(キョウキョウギャクキ)、憂恚驚邪恐悸(ユウケイキョウジャキョウキ)、心下結痛(シンカケッツウ)、寒熱、煩満、欬逆、口焦舌乾(コウショウゼッカン)を主り、小便を利す
古方薬品考:津を生じ、また逆満を瀉す
重校薬徴:利尿を主る。故に能く停飲、宿水、小便不利、眩、悸、瞤動(ジュンドウ)を治し、煩躁、嘔渇不利、咳、短氣を兼治す
古方薬議:胸脇の逆氣、恐悸、心下結痛を主り、小便を利し、消渇(ショウカチ)を止め、胃を開き瀉を止む
◯現代における運用のポイント◯
利尿作用
脾胃の機能を高め、水腫・浮腫およびその他の水滞を治す。
健胃作用
胃内停水による食欲不振・消化不良などに用い、胃内停水を除き、胃腸機能を整える。
精神安定作用
水滞および瘀血による気の上衝によって起こる精神不安に用い、気を下し、精神安定をはかる。
[配合処方]
安中散加茯苓、胃風湯、胃苓湯、茵陳五苓散、烏苓通気散、温胆湯、解労散、化食養脾湯、藿香正気散、加味温胆湯、加味帰脾湯、加味逍遙散加川苓地黄(加味逍遙散合四物湯)、枳縮二陳湯、帰脾湯、芎帰調血飲、芎帰調血飲第一加減、九味檳榔湯(去大黄の変方として)、桂枝加苓朮附湯、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸料加薏苡仁、啓脾湯、鶏鳴散加茯苓、堅中湯、甲字湯、香砂養胃湯、香砂六君子湯、杞菊地黄丸、五積散、牛車腎気丸、五琳散、五苓散、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴芍六君子湯、柴朴湯、柴苓湯、酸棗仁湯、滋陰至宝湯、四君子湯、十全大補湯、十味敗毒湯、小半夏加茯苓湯、逍遙散(八味逍遙散)、四苓湯、参蘇飲、真武湯、参苓白朮散、清湿化痰湯、清心蓮子飲、清熱補気湯、清肺湯、喘四君子湯、銭氏白朮散、疎経活血湯、竹茹温胆湯、知柏地黄丸、釣藤散、猪苓湯、猪苓湯合四物湯、定悸飲、当帰芍薬散、当帰芍薬散加黄耆釣藤、当帰芍薬散加人参、当帰芍薬散加附子、二朮湯、二陳湯、人参養栄湯、八解散、八味地黄丸、半夏厚朴湯、半夏白朮天麻湯、伏竜肝湯、茯苓飲、茯苓飲加半夏、茯苓飲合半夏厚朴湯、茯苓杏仁甘草湯、茯苓四逆湯、茯苓沢瀉湯、分消湯(実脾飲)、防已茯苓湯、補気健中湯(補気建中湯)、味麦地黄丸、明朗飲、抑肝散、抑肝散加芍薬黄連、抑肝散加陳皮半夏、六君子湯、苓甘姜味辛夏仁湯、苓姜朮甘湯、苓桂甘棗湯、苓桂朮甘湯、苓桂味甘湯、連珠飲、六味丸( 六味地黄丸)
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)