牡蠣(ボレイ)
[基原]
イタボガキ科(Ostreidae)カキ Ostrea gigas Thunberg の貝がら
産地:広島県
[異名別名]
カキ殻、牡蠣(ボレイ)
[選品]
古いものほど良く、外面は青白色のものほど良品であるとされる。粉末は鑑別困難なため用いない。
[成分]
炭酸カルシウム(主成分)、リン酸カルシウム、ケイ酸塩、微量のタンパク質など
[薬理]
粉末の一定量以上は制酸効果を与える
[効能主治]
性味:鹹(カン)渋、涼
帰経:肝、腎
効能:寝汗を止める、上衝した気を下げる、汗を止める、遺精・夢精などを改善する、去痰する、るいれきなどの堅い腫瘍を軟化させる
主治:小児のけいれん・引きつけ、めまい、自汗、寝汗、遺精、林濁(リンダク)、不正子宮出血、帯下、るいれき
[引用文献]
神農本草経:傷寒、寒熱、温瘧酒酒(ウンギャクソンソン)、驚恚怒氣(キョウケイドキ)を主り、拘緩鼠漏(コウカンソロウ)、女子の帯下赤白を除く、久しく服すれば骨節を強くし邪鬼を殺して年を延す
古方薬品考:益(イツ)を除き、且、滑洩(カッセツ)を渋す
重校薬徴:胸腹の動を主治し、驚狂(キョウキョウ)、煩躁、失精を兼治す
古方薬議:傷寒寒熱、温瘧酒酒、驚恚怒氣を主り、盗汗(トウカン)を止め、洩精(セッセイ)を療し、心脇下(シンキョウカ)の痞熱(ヒネツ)を治す
◯現代における運用のポイント◯
精神安定作用
気虚が原因となるのぼせ・精神不安・不眠・寝汗・めまいなどに用い、降気をはかり精神を安定させる
抗潰瘍作用
胃酸過多による潰瘍・胸やけに用い、胃酸分泌を抑制し、潰瘍を治す
[配合処方]
安中散、安中散加茯苓、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴根牡蛎湯、定悸飲
【備考】
効能:
中国では一般に、胃酸過多に用いる場合は煅牡蛎(タンボレイ)を用いる(安中散など)。神経興奮を鎮める場合は、生牡蛎を用いる(桂枝加竜骨牡蛎湯など)。
参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)