黄耆(オウギ)

 

[基原]

マメ科(Leguminosae)の ① キバナオウギ Astragalus membranaceus Bunge または ② A.mongholicus Bunge の根

産地: ① 北海道、茨城県、岩手県、青森県、黒竜江省、内蒙古、河北省、韓国 ② 山西省、陜西省、内蒙古



[異名別名]

黄芪(オウギ)、百本(ヒャクホン)、王孫(オウソン)、戴椹(タイジン)



[選品]

よく乾燥し、太く(小指大程度が良い)、皮に皺紋(シュウモン)が少なく、質は緻密で柔軟、弾力性があり、容易に折れにくく、甘味を感じ、断面に空心(空になった部分)や黒心(黒くなった部分)のないものを良品とする。日本産・韓国産はキバナオウギで、やや甘味があり充実している。中国産はナイモウオウギでやや繊維質で甘味はない。

貯蔵:虫やカビがつきやすいので、乾燥し、風通しの良い場所に保管する(温度20℃、湿度40〜50%が望ましい)



[成分]

フラボノイド、トリテルペノイドサポニン、r-アミノ酪酸(GABA)



[薬理]

抽出液:血圧降下、利尿
GABA:血圧降下
サポニン成分:血圧降下、抗炎症など



[効能主治]

性味:甘、微温
帰経:肺、脾
効能:体表の衛気(エキ)を調え止汗する。利尿し水腫を除く。排膿し傷口の回復を早め、皮膚の再生を促す。気虚下陥を治す。炙ったものは、脾胃を補い気を益す
主治:自汗、寝汗、血痺、乳腫、回復の遅い化膿性のできもの。炙ったものは、精神および肉体疲労、胃腸系の衰弱による下痢、脱肛、気虚による貧血、帯下が続くもの、およびすべての気血両虚の証



[引用文献]

神農本草経:癰疽(ヨウソ)、久しき敗瘡、膿を排し、痛みを止め、大風、癩疾(ライシツ)、五痔、鼠漏(ソロウ)を主り、虚を補い、小児の百病を主る

古方薬品考:元を益し、衛分を固実す

重校薬徴:肌表の水を主治す。故に皮水、黄汗(オウカン)、盗汗、身体の腫れ、不仁を治し、疼痛、小便不利を兼治す

古方薬議:膿を排し、痛を止め、肉を長じ、血を補ひ、渇、腹痛を止め、虚労自汗を治し、肌熱及び諸経の痛を去る



◯現代における運用のポイント◯

止汗作用

身体虚弱および表虚証による自汗に用い、利尿を促すことによってその汗を止める

補気・昇堤作用
貧血・顔青・めまいなどの陽虚証に用い、脾胃を補い、陽気をめぐらせ上昇させる作用を持つ

排膿作用
熱のないできものに用い、排膿を促し回復を早める。また、化膿性体質の改善薬としても用いられる

利水・消腫作用
貧血・低血圧などの虚弱体質および消耗性疾患を患い体力が弱っている者の水腫に用い、その利尿作用によって浮腫および水腫を解消する

 

 

[配合処方]

黄耆桂枝五物湯、黄耆建中湯、加味帰脾湯、帰耆建中湯、帰脾湯、桂枝加黄耆湯、紫根牡蛎湯、七物降下湯、十全大補湯、秦艽羌活湯、清暑益気湯、清心蓮子飲、千金内托散、大防風湯、当帰飲子、当帰芍薬散加黄耆釣藤、当帰湯、人参養栄湯、半夏白朮天麻湯、扶脾生脈散、防黄耆湯、防已茯苓湯、補中益気湯、補腸還五湯、麗沢通気湯、麗沢通気湯加辛夷

 


【備考】

近年の研究報告:

1.黄耆は、血圧低下・利尿・肝保護・免疫増強・抗菌・強壮・鎮静作用などを有し、慢性腎不全において、オウギ未投与により炎症マーカーや酸化ストレスマーカーを低下させ、血清クレアチニン値を有意に低下させ、糸球体硬化病変の進展を抑制するという報告がある。

2.メイラード反応によって生じる週末糖化産物AGEsは細胞内酸化ストレスの原因物質であり、老化や臓器障害、発がんの主要原因物質として注目されている。特に高血糖が持続する糖尿病において、さまざまな合併症の直接的原因として重視されているが、一般人でも、高温で調理された食品や焙煎したコーヒーやチョコレート、タバコなどによって、多量のAGEsが体内に取り込まれて蓄積し、細胞内酸化ストレスを増加させて、動脈硬化、糖尿病、がん、認知症、骨粗鬆症、不妊症、脂肪肝炎、歯周病、皮膚の老化などを促進させる。黄耆はこのAGEsを低下させ、AGEs由来の炎症・酸化ストレスマーカーを低下させて、血管内皮障害や、臓器障害を改善する働きを有しており、今後老化予防の鍵となる可能性が考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:「漢方294処方生薬解説」(じほう)